当院では、体内のがん細胞に「正常な遺伝子を新たに加える」という手法を用います。
がん細胞の60%以上で、「P−53」という遺伝子(がん抑制遺伝子)の異常が確認されています。P−53遺伝子は本来すべての細胞にあって、細胞に異常が発生すると、その異常を修復するか、修復不可能な場合は細胞を死滅(アポトーシス)させる機能を持っています。
ところが、そのP−53遺伝子自体に異常があって機能できないと、がん細胞にストップをかけるものがなく、がんが増殖していくというわけです。
そのメカニズムに着目し、正常なP−53遺伝子をがん細胞内に新たに加えてちゃんと機能できるようにしてやろうというのが、この治療法です。P−53遺伝子がちゃんと機能するようになれば、がん細胞は自ら死滅していくはずです。
しかし、ここで問題があります。私たちの細胞にはめったなことでは外部から侵入できないのです。正常なP−53遺伝子を体内に入れても、細胞の中までは入っていくことができません。
そこで、ベクターと呼ばれる乗り物を使うことにします。この場合のベクターには、病原性を失くしたウイルスです。例えば、私たちは風邪をひきますが、あれは風邪のウイルスが細胞の中に侵入することによって起こります。つまり、ウイルスの「感染する力」を利用して、乗り物に使おうということです。
実際の治療は簡単で、ベクター(ウイルス)に治療用の遺伝子(正常なP−53遺伝子)をあらかじめ入れておき、点滴などによって体内に入れるだけです。
ベクターはがん細胞の中に入り込むと、ウイルス本来の働きによって自分の遺伝子を細胞内に吐き出し、自動的に死滅します。細胞内に入ったP−53遺伝子は増殖をはじめ、その働きを活発にしていきます。 なお、ベクターには病原性の弱いウイルスを使います。また、ウイルス本来の病原性が現われないように、事前にウイルス遺伝子の本体を削除したり、ウイルス遺伝子本体を起動する遺伝子を削除しておきます。
認められる副作用は発熱ですが、通常、治療翌日には解熱します。また、副作用が現われた場合にすぐ治療できるように、ベクターのウイルスの遺伝子に、抗生物質ですぐ殺せる遺伝子が加えられています。
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